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Human Reproduction
17:1399-1403.2002の中で、D.B.Dunsonらは、Natural family
plannningを実践している782組のカップルの5860周期についての解析から以下のように報告しています。 妊娠可能な時期(fertile
window)は排卵日を最終日とした6日間に限られ、排卵の翌日には妊娠しないし、排卵日も妊娠率は低いこと。特に妊娠の可能性が高いのは、基礎体温上の排卵日の2日前をピークとした排卵日の4日前から前日の間の性交渉である。(左図参照) これらのことは以前から知られていた事実であり、当院でも平成14年3月の開院以来、超音波検査による卵胞モニターや尿のLHやエストロゲン検査薬、さらには頚管粘液を用いて、排卵を予知し、性交渉やAIH(夫婦間人工授精)のタイミングを決定しています。 |
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そこで、開院後1年が経過しましたので、本年5月末の時点でのこれまでの不妊治療の成績をまとめてみました。開院以来、本年2月末までの1年間の不妊患者数は129名。そのうち他院からの注射依頼や、受診回数が1〜2回のみで以降受診されていない方を除いた91名が解析対象となりました。 無精子症2名と両側卵管閉鎖の2名が含まれていましたので、その方たちを除いた87名の内妊娠された方は50名(妊娠率57.5%)でした。なお、この中から5月末までにさらに5名が妊娠していますので、現在、累積妊娠率は87名中55名の63.2%となっています。 |
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治療法別では、経口の排卵誘発剤であるクロミッドまたはセキソビッドが39名に投与され、 13名が妊娠(33.3%)、HMGやFSHなどの卵巣刺激注射は8名に行われ3名が妊娠(37.5%) に至っており、内1名が双胎妊娠でした。 AIHは12名に行われ8名が妊娠(66.7%)されています。 また、通気テスト後の卵胞モニター、LHタイミングのみでも7名が妊娠に至っており、 一般不妊治療での卵管の通過性の重要性が示唆されます。 ただ、妊娠された50名の方のうち7名(14%)が残念ながら流産に終わっています。
治療法 |
症例 |
妊娠 |
妊娠率(%) |
流産 |
流産率(%) |
多胎(双胎) |
双胎率(%) |
タイミング |
87 |
29 |
33.3 |
3 |
10.3 |
- |
- |
排卵誘発剤 |
39 |
13 |
33.3 |
2 |
15.3 |
0 |
0 |
卵巣刺激注射 |
8 |
3 |
37.5 |
1 |
33.3 |
1 |
33.3 |
AIH |
12 |
8 |
66.7 |
2 |
25 |
1 |
12.5 |
平成15年4月末現在 |
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このように、不妊治療では、排卵を予知し、排卵前の よいタイミングを見つけることが、いかに重要かが理解できることかと思います。 今後も、タイミングを計ることを第一とし、妊娠に至らない方には、 理解が得られれば、排卵誘発やAIH治療を積極的に行う予定ですが、 それでも妊娠に至らなければ、体外受精・胚移植を始めとした ART(生殖補助医療)が必要となりそうです。 |